忙しいときや、急いでいるときは、いろんなことが雑になりますね。
誰でもそうだと思いますけれど、時間がないと思うことで、みじん切りひとつとっても、綺麗に揃える細かいみじん切りじゃなくて、適当な粗みじん切り程度で「ま、いいか」ってなったり。
丁寧に書いていたノートでも、時間がないってなったら、殴り書きの乱れた汚い字になりますね。
ほかのどんなことでも、時間がない、急いでいる、と思うだけでやっていることが本当に粗くなります。
人とのコミュニケーションもそうですね。
いま時間がない、と思うと、相手の話を最後までちゃんと深いところまで聞けない。
言葉だけは耳に届いていても、その意味することの奥にあるものは、全く想像する余裕がない。
けれど、一日の決めたことを全部やろうと思ったときに、忙しくても、忙しいと思わないコツがあるんです。
それさえ身につければ、人が見てあんなに秒単位で一日中動いていても、あの人いつも余裕があるね、って見えるんですね。やっていることが雑になっていないね、って。
どんなコツか?
それはたったひとつ、いまこの瞬間に集中するってことです。
集中力だけです。
後のことも、前のことも考えない。後でやらなきゃも考えない。終わったこと、失敗したな~、ああしておけばよかった、も考えない。
いまやるべきことに、この瞬間にものすごい深い集中力を持って、全意識をそこに向けているときは、忙しくないんです。
なぜなら集中しているからです。
その集中力は、切り替えようと思う必要がなく、自然に確実に100%切り替わっていく集中力です。
完全に切り替わらない限り、今というものに100%集中することはできません。
今やるべきことに100%集中していたら、もう前のことは考えてないし先のことも考えていない。
これが、ヨーガのとても大事だとされている教えのひとつです。
その瞬間、瞬間に意識を覚醒し続けることがヨーガなんですけれど、意識を覚醒し続けるということの意味は、この一瞬に全神経を集中していることです。
そうでないと、時間の制約があったり、やることがものすごく増えたり、または、苦手なこと、うんと時間がかかる初めて取り組むことが、やらなければならないことのリストに入っただけで、何にも集中していない。
心はさっき終わったことをまだ考えていたり、これからやらなければいけないことを考えていたり、色んなことに飛び回っているので、この一瞬っていうものに心の深いところの焦点が全然合っていないんです。
そうすると、自分は見えているつもりやっているつもり聞いてるつもりなんですけれど、本当のところは何も感じることができない。
その時間をドブに捨てているのです。
そういう時間ばかりになると、人生を自らの手でどんどんドブに捨てている。非常にもったいないですね。
でも言うのは簡単で、これはなかなかトレーニングをしないと、集中力は開発されにくいものですね。
なぜなら、同時進行で沢山やらなきゃいけないことがありますから。今、この瞬間にものすごく集中しているけれど、意識は三つ先のことまで全部わかって、全体像も全部わかっている。そういう意識の持ち方で、なおかつこの瞬間に深いところで集中するのは、レベルの高いことです。
けど、誰でも出来るはず。それはヨーガの教えですから。
そうすると、びっくりするくらいの量の作業が、最高の美しさと深さと想像力を持った仕上がりで、疲れないで自分の手からどんどん生まれてきますね。
それは、もう練習し続けるしか身につかない。
練習で一番わかりやすいのは、アーサナです。
スーリヤ・ナマスカーラをやっている自分を、外から見る。どういう動きをしているか? 完全に俯瞰で外から見ている。なおかつ、中からも見ている。
重さの球はどこにいった? 同じなのか? 大きいのか? 小さいのか? いくつあるのか? 中からも見ていると同時に、呼吸と動きが合ったときにどのくらい筋肉が伸びるのか? 縮むのか? ふと無意識になった瞬間に、足は離れて手首は90度じゃない、ということも外から自分が見つけることができるような意識の持ち方でいると、日常生活の集中力がびっくりするほど上がります。
一瞬一瞬に、そういうトレーニングをやり続けるだけです。大変なことは何もないんです。
その意識を持ち続けて、練習し続けることで、自然にそれが身につくので、どんなときも、いまお話している全体像の全部を把握しつつ、三歩先のことも理解し、映像を持ちつつ、いまこの瞬間にやるべきことに、とても深い心と集中力が合わさった状態で臨むことができるようになるんです。
アーサナは、単に言われたとおり10秒吐けばいいのね? っていう取り組み方じゃなくって、もっともっと自分の日常生活の時間を、限りなく伸ばす。1日を48時間使えるようにする。
しかも、誰よりもクオリティの高い成果を出しつつ、そのことがすごく嬉しくて楽しい、って余裕が失われることのない毎日になるために、一息10秒をどういう姿勢で吐くかっていうことが限りなく重要になってきますね。
そういう意識で、まず自分の体を俯瞰で見る。
やっている形は、どうなっているかを想像する。
どの筋肉を、どう使っているかを知り続ける。中からも、どこに重さを持つと、どこがどういう風に伸びてどう縮むのかを知り、更に刺激を強めるためには、それをどのように動かしたらよいのか? 呼吸と合わせると、どういう変化が起きるのか? ということを、集中しながら感じる。
終わった瞬間に、心と感情はどう変化したかもキャッチするのが、一息10秒のあり方です。
2020年9月23日(水)朝のレッスンで
アメイジング・ヨーガ教室
シャンティパット主宰
紙や まさみ