苦手なことを一生懸命頑張ると見えてくることがあります

骨格のゆがみは、どうして起こるのでしょう?

それは、強い方をいつも使うからです。
一般的に右利きだったら右しか使わないし、左利きだったら左しか使わない。自分にとって、得意で使いやすくて強い筋肉を常に使い続けているからです。

無意識の癖も、たとえば信号を待つ、電車を待つというときに、どちらかの足に体重をかけてどちらかの足が休めの形をしている。

強い筋肉ばかりがもっともっと日常的に鍛えられて、脳との連動の悪い弱い筋肉は取り残されているわけですね。

だから、弱さと強さの差が開いてアンバランスな形になっていき、強い筋肉の方に骨が引っ張られていくので、回転したり横にずれたり、曲がったりということが起きます。

その他、遺伝的な問題などもいろいろありますけれど、自分で調整できるポイントでいえば、この強い方ばかりを使わないということです。

スポーツは、強いところを全部使ってどんどん強くなりますが、ヨーガは、バランスを取るという意味なので、強い筋肉と弱い筋肉のバランスをとるためにやりにくほうを回数多くやります。

クラスでも本当は、左右同じ回数じゃなくて、4-4-4としたいのですね。右やって左やって、やりにくかった方プラス4回。
2時間のクラスが続いている時代は、ずっとそのようにしてきました。

いまは時間の制限があるのでそれをカットしていますけれど、もしもお家でアーサナをやるとしたら、必ずやりにくいほうを沢山やる。

それが自分の体を、より元気に使いやすくして、病気にならない正しい骨格をつくっていくということです。
これは誰が聞いてもよく分かることだと思います。

ここから考えたいことは、好きなことばかりやってちゃダメってことなんです。

好きなことだけ、得意なことだけやっていくと頭のなかも心のなかも、人生そのものにもアンバランスが生れます。

嫌いなこと、やりたくないこと、苦手なことはどんどん取り残されていて、自分のなかに偏りをつくってしまうんです。

世の中には、好きなことだけやればいいみたいな風潮が最近はありますけれど、そんなことはありません。それはやっぱり私は間違いだと思います。

嫌いなこと、苦手なこと、やりたくないことを一生懸命頑張ると、そこから見えてくるものは、好きなことをやっているときよりも大きいです。

なぜなら辛いからです。
その辛さという、客観的には見たくない自分の心のなかの動き、逃げたい思い、投げ出したい思い。めんどくさい、できない、何でこんなことやらなきゃいけないの? という不満とか。
いろんなものが心のなかから浮上してくるので、ものすごく自分を見つけやすいんですね。

その心の動きによって、じゃあなぜやるの? って自分への新たな問いかけが生れます。
答えを探そうとするとき、ステップが上がるんですね。

人によって状況によっても答えは違うと思いますけれど、なぜそれでもやらなきゃいけないのかって考える。
じゃあ止めてしまおうかと考える。
自分自身との深い対話によって、今度好きなことをやったときに、そんなに練習していなくても、好きなことは自動的にものすごく上手になっている。

バランスというのは、そういうことなんだとよく分かります。

嫌いなこと、やりたくないこと、苦手なこと、めんどくさいことに一生懸命取り組んで、なおかつ好きなことも頑張っている人は、だんだんマルチで全体的に魂の形が本来あるべき姿に整っていくんですね。

心の安定も人格的な豊かさも、人生そのものの輝きも、そこから生まれます。

嫌いなことはやりたくないという人が多いですけれど、自分の体っていうものを例に考えれば明らかですよ。

外腿だけを使っていれば、どんどんガニ股になるし、毎日こごんで腰を落としていれば、どんどん背中が丸くなって、あっという間に30代でもうおじいさんおばあさんの体をしている人は世の中にいっぱいいます。

弱いところに意識を持って鍛えよう、という気持ちがないからですね。

心のなかも一緒です。
自分の苦手な部分を鍛えていくことによって、全体的なバランスがものすごく上がっていくイメージをしっかり持てると、嫌いなことも楽しくなりますね。

一生懸命やる力が強くなって、嫌いなこと、やりたくないことが好きなことと同じくらい楽しんで、やれるようになるんです。

これは、鍛練の結果ですね。
ぜひそういう境地に至って、何をやっても楽しい、別に好きなことだけじゃなく嫌いなことをやっていても楽しい、という日々であるとよいと思います。

2019年3月27日(水)朝のレッスンで

アメーイジング・ヨーガ教室
シャンティパット主宰
紙や まさみ